AKB48の振付解説
初めてセンスが生かされた「RIVER」
――「大声ダイヤモンド」で初めてAKB48の振付を担当された牧野さん。最初に、大島優子のダンスの魅力とは、いったいなんでしょうか。
振付の理解力と、豊かな体現力です。大島さんは、振付の意図をきちんと汲み取ったうえで、それ以上のものを打ち返してくる人ですね。
――昔から、ダンスで目立っていた印象があります。大島さんは、最初から目に付いたのでは?
それが、当時の彼女の印象は、ほとんど残っていないんですよ。おそらく彼女が踊れるだけに、手のかからないタイプだったからだと思うんですが。その後も、何でも器用にこなすなぁというイメージでした。
――意外です! では、大島さんの印象が強くなったのはいつでしょう?
「RIVER」です。「RIVER」の振りはわりと難しくて、踊りも激しいんです。でも、大島さんは振り入れ日から、見たことがないぐらい生き生きしていたんですよね。「うわ~、できな~い!」って喜んでいて。
――できないことがうれしかった、と!
そうなんですよ。きっと、それまでは振付が簡単で刺激がなかったんでしょうね。「RIVER」のときは、できないことに取り組むのが、楽しかったんだと思います。休憩のときも休まず、嬉々として練習をしていましたから。
――牧野さんから見て、何か発見はありましたか?
「この子は、本当に踊れる子なんだな」と気づかされました。それまでは、踊るとはいえ"アイドル"を意識した控えめな振付だったので、全員の踊りに差があまり出なかったんですよ。でも、激しく踊らせてみたら、大島さんがずば抜けてカッコよくて。「RIVER」は、彼女のセンスが初めて生かされた楽曲でしたね。
――彼女も、踊れることが自分の個性だと思っているのでしょうか。
そうでしょう。今でも、自分のいいところをきちんと見せたいという、ハッキリした意思を感じますし。こちらも、激しく踊らせたいなら大島さんを中心に板野さん、高橋さんなどを前に配置するようにしています。
――ただ大島さんも、「RIVER」のときは今ほど目立つ位置にいたわけではないですよね。
はい。だからこそ、「ヘビーローテーション」は彼女のダンスに大きな変化をもたらしました。振付を通して表現する実力がついたのは、この曲からですね。
――初の大島優子センター曲「ヘビーローテーション」。彼女は、どんな気持ちで臨んでいましたか?
振り入れの日から、「これは私の曲だ」という意識が強かったですよ。部屋に入った瞬間から「先生、どんな振りですか?」と聞いてきましたし、振りの一つひとつにも「これ、かわいい!」と声を上げていて。同時に、「大島センターの曲はよくない」という評価は避けたい、と感じているように見えました。
――楽曲の評価が自分への評価につながると考えていたのでしょうね。
はい。ですから、自分から率先して練習していましたし、振りが難しくても「できない」とは絶対に口にしなかった。楽曲の振付って、ある意味センター次第なんです。センターがちゃんとできるなら、他の人は許されるみたいなところがある。でも結果的に、大島さんの意識の高さは、他の子の意識も引き上げていきました。
――牧野さんは、どんなことを意識して振りを作ったのでしょうか。
大島さんがセンターだとわかってから、彼女じゃないとできない振りを一つ入れたいと思いました。それが、冒頭のソロダンスです。
――「♪Get down」のところですね。あの部分は、初めて見たときに驚きました!
ただ、あの振りを完璧にできるのが彼女しかいないので、劇場公演ではアレンジしたものも作りました。下に行ったあと立ち上がってから、ちょっと横にずれなくちゃいけなくて、彼女にも最初は「少し難しそうだから、変える?」って聞いたぐらいです。もちろん、大島さんは簡単にするのが嫌なので「できます」、と。
――先ほど、大島さんは「ヘビーローテーション」で表現力をつけたとの話がありました。具体的にいうと……?
「ヘビ-ローテーション」でいえば、「♪その距離に」で左腕を右手が登っていくところとか。彼女だけ、右手の指先にちゃんと目線が向いていて、登っていくのを見つめているんですよ。本当にちょっとしたことが、振りをかわいく見せるんです。「♪I need you」で、腰をきゅっとする動きやタイミングの絶妙さも、大島さんならではですね。
――振付に合わせて、表情がくるくる変化するのも魅力的ですよね。
大島さんはダンスが本当に好きで、自信がある。だから余裕があって、細かいところまで意識がいくんでしょう。「ヘビーローテーション」の振りは評価が高いのですが、大島さんセンターだったのも大きな理由だと思うんですよ。彼女は振付の意図を汲み取って、コミカルな部分はコミカルに、カッコいい部分はカッコよく表現して見せてくれましたからね。
――大島さんの「いい曲にしたい」という思いが、振付を表現する力を体得させたのかもしれませんね。
そうですね。AKB48の子って、振付を自分色に染めていくタイプが多いし、それは見せ方としてアリなんです。ただ、振付の再現力でいえば、大島さんに勝る人はいないんじゃないでしょうか。彼女は、まさしく変幻自在のエンターテイナーですね。
――大島優子の成長の過程がわかる、とても面白いお話でした。どうもありがとうございました。





